BRIEF KNOWLEDGE OF SCREWSねじの豆知識
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ねじの表し方
ねじの表し方は、ねじの呼び、ねじの等級、ねじ山の巻き方向に関する規定に従い、次のように構成されています。
[ねじの呼び] - [ねじの等級] -
[ねじ山の巻き方向]
標準的なねじでは一般的に、[ねじの等級]と[ねじ山の巻き方向]が省略されることが一般的です。たとえば、ミリ系と呼ばれるねじの場合は、次のように表します。
[ねじの種類を表す記号]
[ねじの呼び径を表す数字] × [ピッチ]
例:M8x1.25…ミリねじ、呼び径8、ピッチ1.25
頭文字の「M」は、ねじの種類がミリ系であることを表します。その後、呼び径(もしくは直径)を表す数字、ピッチ表記と続きます。但し、規定されているピッチが一つだけの場合は、ピッチ表記は省略されます。
インチねじの場合は、ピッチではなく25.4mm(1インチ)あたりのねじ山数を記載します。
ねじの強度区分
ねじの強度を示すために、JISでは次の10段階の強度区分が設けられています。
3.6 4.6 4.8 5.6 5.8 6.8 8.8 9.8 10.9 12.9
左側の数字(3~12)は、N/mm2で表した呼び引張強さの1/100の数字を示しています。
右側にある数字(6~9)は、呼び下降伏点と呼び引張強さとの比の10倍の値を示しています。
これら二つの数字の積は、N/mm2で表した呼び下降伏点(N/mm2)の1/10を表すことになります。
例
強度区分10.9のボルト…引張強さ:1000N/mm2、下降伏点は引張強さに対し90%
つまり、900N/mm2(1000N/mm2 × 90%)以上の荷重をかけると、このボルトは伸びきり元に戻らなくなります。
ねじを締め付ける際の注意
①締め付け不足は緩みを招きます。しかし、過度の締め付けも緩みの原因となる場合があるため、適切な締め付けを行う必要があります。
目標となる締め付け強さは、ねじの種類、ねじの強度、ねじ面や座面の摩擦、締め付け法などで決まります。
締め付け法はJIS B1083で規定されています。締め付け強さの求め方も、JIS B1084に規定されています。
②ステンレス鋼には、熱伝導が悪いという特徴があります。潤滑をしないと、おねじとめねじの接触面がすぐに焼け付きます。
締め付け前にねじ部に適切な潤滑剤を塗布するか、予め潤滑処理がされているねじを使用する必要があります。
ゆっくりと締め付けることも、焼け付きを防ぐ効果があります。
適切な締め付け強度区分
締め付け管理法には、以下の3つの方法があります。
- トルク法
- 回転角法
- トルク勾配法
最も広く利用されているのは「トルク法」です。しかし、ある程度限定された条件にて適合するもののため、絶対ではなく目安として利用するのが望ましいです。
「トルク法」で締め付ける場合、以下の式で目標締め付けトルクの概略の値が得られます。
目標締め付けトルク
(N・m)TfA=0.001×K×D×Ff/(1+0.01×m)
k | トルク係数(JIS B 1084の締め付け試験で得られた最小値) |
---|---|
d | ねじの呼び径(mm) |
Ff | おねじ部品の耐力(または降伏点)×Asの85%(1000N/mm2)と仮定する |
As | ねじの有効断面積(mm2) |
m | 締め付け工具のトルク精度(%) |
例えば、強度区分8.8、M10のボルトを締める場合、k=0.195、m=±5%とすれば目標締付けトルク(TfA)は次式で求められます。
TfA=0.001 × 0.195 × 10 × 0.9 × 640 × 58/(1+0.05)=63(N・m)
ねじの緩み
締結のために使用するねじでは、その緩みが問題を引き起こすことがあるので、
いろいろな対処方法が考えられていますが緩みには次のような種類があります。
①回転による緩み
一度締め付けたねじが、何らかの原因で緩む方向に回転する場合があります。
主に考えられる原因は、荷重の増減や衝撃力が加わることの繰り返し等です。
②回転によらない緩み
締結時にねじに与えられた予圧力が、次のような原因で失われると緩みが発生します。
初期緩み | 加工時の表面凹凸が締結圧力を受けて変形し、ねじ負荷面・座面・締結部材接合面などで予圧力が失われて緩みとなることがあります。 |
---|---|
陥没 | 被締結部材が柔らかい材質の場合、被締結部材の表面が塑性的に陥没し、予圧力が失われて緩む場合があります。 |
微動摩耗 | 締結した接触面同士が微動することで生じる摩擦や摩耗も、緩みの原因となるケースがあります。 |
緩み止め方法
ねじの緩みを防止するために、いろいろな方法やボルト、ナット、座金、取り付け方法などが考案されています。
比較的多く使用されている代表的な方法を紹介します。
ねじ面の摩擦力増強
摩擦力の増強による緩み止めナットの代表が、ハイロックナット、ハイロックアドです。
ねじ面を僅かに変形させることにより、おねじとめねじ間で適正な摩擦力を確保しています。
その他の方法として、板バネやナイロンをナットに組み込んでおねじと噛み合わせる方法、ねじを緩める方向に回転すると径が大きくなるコイルスプリングをねじ溝に挿入する方法もあります。これらは部品点数が増えるため、高価な製品が多い傾向にあります。
接着
安価な方法として用いられるのは、接着剤系の緩み止め方法です。
効果的な方法ではありますが、接着剤は化学製品のため、金属製品にはない注意事項(安全使用ガイド)があり注意が必要です。
ダブルナット
2つのナットを互いに逆方向に作用(羽交い絞め、ロッキング)させることにより、ねじ面で軸方向での締め付け力を生み出す方法です。
一般的なナットを2個使うケースが一般的です。
一方、噛み合わせ偏心部分またはテーパ部分を設け、更にラジアル方向またはアキシャル方向でねじ面を締め付ける高価なナットもあります。
ナットまたはボルト座面の摩擦力増強
代表的な製品は、座面の接触面を大きくしたフランジナットです。
その座面に更にギザ面(セレート、セレーション)を加工したものもあります。
座金
最も簡単なものはスプリングワッシャーです。
ねじやナットに軸方向の予圧を与えることにより緩み防止を狙う方法ですが、その効果は限定的です。
効果的な座金は、2枚のプレートで構成された噛み合わせ座金です。
片側は互いが噛み合う面として凹凸状になっており、その反対側は取り付け面(ナットやボルト座面等)に食い込むようにギザ面が設けられています。
上記は、主にコスト的な面からナットまたは座金を対象にした緩み止めの方法です。
ボルト自体で緩み止めする場合もありますが、殆どが特殊なねじ形状をしており非常に高価です。
また、市場流通性が低いというデメリットもあります。
より手間をかけて確実に緩みを防止する手段として、回転すれば張り合う方向にワイヤーを巻き付ける、切り欠きをナットに設けて座金を食い込ませる等の方法もあります。